INFPの転々白書

その時の価値観を書き殴る。

詰まってる駅裏のトイレは使うな。

「いや、なんでそんなことしてんのソイツ」と思う話がある。俺はソイツの詳しい事情なんて一切知りたくないし関わりたくないのだが、この話を聞いた奴は知りたがるかもしれん。人伝に聞いた話はそれだけ気色悪さのノイズが除去され好奇心の方が上回るからだ。ともかくこの出来事で学んだことは、詰まっている駅裏のトイレは絶対に使わないってこと。

 

この街で働き始めて半年ほど経った時の話だ。当時23歳。俺はコミュ障だった。つか高校2年くらいから人間関係を拗らせてるためかなり暗い奴だって思われているに違いない。なので24の頃のことなんてあまり思い出すらない。この話を除いてだが。コミュ障の奴の最大の特徴は仕事を上がって飲みに行くだとか街に買い物へ行くだとか、そういうアクティブかつ偶発的なイベントを回避することに心血を注ぐことだ。仕事を終えたら即帰宅、これが俺たちの流儀だ。当時の俺はまさにそれだった。仕事を終えたらとっとと電車に乗りまっすぐ帰る、例外なんてない。

ある日の夜7時、仕事を終えて帰路についたが翌日は休みで疲れも溜まっていたことから、とにかくどこか座りたくてたまらなかった。付近にあるのはコンビニ前のベンチか、いつも使っている駅の裏の石のイス。

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こんな感じのやつね。

その駅は拠点駅なので利用客が相当多く、駅の裏もめちゃくちゃ多くの人が行き来するような、街の心臓として機能するところだ。でもそのイスはあまり利用されておらず、行き交う人の使う歩道からも少し離れていたため、コンビニでファミチキを買ってそこで休憩することにした。7時半ごろになりそろそろ次の電車で帰るかと思い、小便へ行くことにした。駅の裏には公衆トイレがあった。俺の座っていた石のイスから見て右斜め前にあった。立地的に、そのトイレの真上あたりが6番線のホームだ。男女それぞれ引き戸がまずあって、それを開けて中に入ると、まず右手側に例のごとく立ちショントイレが3つ並んでおり手前には手洗い器、左手に洋式トイレの個室が一つ、そして部屋の真ん中には横にしたガムテープくらいの大きさの排水溝がある作りだ。今思えばこれだと引き戸を開けた際に立ちションしている姿が外に丸見えの構造、不親切なもんだ。しかも汚いし。小汚いっていうか。俺は一番奥の小便器で用を足した。足したのだが、おしっこがトイレの中にジョボジョボ溜まっていく。流れない。相当焦った。うええ?って言った。このままではやがて聖水は満ち溢れ俺の足にかかるではないか。いったんおしっこを中断、真ん中のトイレに移動した。この判断力、世の男の大半は持っていたいだろう。ほとんどの男はおしっこ中断することがダサいとか思ってるからなアホだから。小便の途中で地震とか来ても「あ!やばいおしっこやめて逃げなきゃ!あーでもおしっこやめるの恥ずかしくてやめられないィィィイ!!ジョボジョボジョボ~」ってなるんだろうなアホだからな。俺は違う。途中でやめる。そして真ん中のトイレで用を足す。したらそこも詰まってた。

え?なんで?

ジョボジョボと水の注がれる音を聞きながらそう思った。この時点で俺の弾薬は底をつきかけていたので、もうこのまま全部出すわっつって全部出し切った。少し溢れた。うん。俺は悪くないね。まあな一回切り替えたからな。今でこそもう一つの小便器にもう一回切り替えろよとか思うしお前らも思ってるんだろうけどな俺一回切り替えてるから。

手を洗いながら考えた。これ一番左のやつもつまってんのかな。

ほんと何を考えていたのか、俺は左端の小便器の排水溝の蓋を開けてみることにした。

髪の毛と1匹のカエルがぎゅうぎゅうに詰まってた。ヒッ!って声が自然と出た。

その日はそそくさと切符を買って帰った。きっしょくてたまらなかった。

それから少し経った金曜日。もう一度あのトイレに行ってみることにした。それまであのトイレが気になってしょうがなかった。なぜあんなことになっているのかが頭から離れない、でもわざわざ行くのもなあって感じで過ごしていたが、意を決して行くことにしたのだ。結構日を跨いでいたし、さっきも言ったようにその辺は駅の裏といえども結構な人が行き交う場所なので、その日はもうそこまで恐怖心を抱いてなかった。扉を引いてみてまず驚いだのは、なんかトイレの中全体がすげえ綺麗になっていたことだ。壁と床の汚れが落とされていた。これが一番不思議だったかもしれん。

小便器のフタを開けようと思った。開けて、もう一度中を見ようとした。ここにきて恐怖心がどっとあふれてきた。いや、あれはねまじで怖ぇって。きっしょいもんマジで。結局俺はフタを開けることはしなかった。その代わり、そのトイレにある手洗い器で水を両手に溜めて小便器に流してみることにした。人が入ってこないか心配しながらやってみた。

流れた。

流れた(゚∀゚)

いやーこれで安心してこの領域使えるわーと安どした。俺はてっきりおかしな奴がこの辺にいるんじゃないかと恐怖していたが、まあこれだけ利用客の多い場所だ、そういう奴もいるだろう。いたとしてもそういう奴が現れるのは深夜だろうきっと。そう思った。その後、一度コンビニへ行って唐揚げを買って例の場所へ、あの石のイスに座り休んだ。スマホをいじりながら明日が休みであることの安心感を味わっていた。俺の意識はトイレから完全に離れていた。

 時刻20時。帰るかと思いトイレへ向かった。

引き戸を開けた。

女がいた。

トイレの真ん中にある排水溝の蓋を開けて、ベトベトギトギトの髪の毛を右手に持っていた。

こちらに背を向けつつ、顔だけこちらに向けてきた。

 

安心しきっていた。完全に油断した。一瞬時間が止まったが、次の瞬間に俺は速攻で逃げるようにそこから離れた。ほんttttttっとに勘弁しろよってくらいびびった。

女の風貌は普通だった。イメージしやすいような、長くてボサついた髪とかてはなく、ショートでサラサラの茶髪に紫のパーカー(これはちょっと記憶が曖昧)、今時の女性って感じの奴だった。

 

それ以来、仕事を変えるまではそのトイレは使っていないし近づいてすらいない。なにが石のイスだよ。あのとき俺はマスクをしていたから、それ以降帰宅時にはマスクを外して、髪形も少し変えたりした。まるで片思いのようでキモいがそんなこと構っていられないほどにびびったのだ。とにかく出来るだけあの女に見られた姿から変えたかった。

今はもう別の職場で働いているが、その駅はかなり近場だ。あの時間には近寄らないようにしている。

なんであんなことしてたんだろうアイツはなんて、考えたくもない話だ。

ってことで皆も詰まってる駅裏のトイレは使わないほうがいいよ(適当)